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ロシアの大手銀行をSWIFT(スイフト)から排除、金融の核爆弾とも呼ばれているSWIFTとは何?

 米国と同盟諸国は、ロシアの一部の銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)の安全なメッセージングネットワークから排除することで合意した。ウクライナに侵攻したロシアへの制裁を強化する動きとなる。

 岸田首相は27日夜、欧米諸国が合意した国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワークから一部のロシアの銀行を排除する措置に日本も加わると表明した。

 ロシアの大手銀行をSWIFTから排除することによって、ロシアへの経済金融制裁を強めた格好となる。これは2012年3月17日にイランの核疑惑のために、同様のことが行われたことがある。世界の経済に与える影響において「核爆弾の選択」とも呼ばれているこのSWIFTからの排除とは、いったいどういうことなのであろうか。

 海外との取引には日本の内国為替で使われている「全銀システム」のような決済システムがない。そのために、外国為替銀行が外国の銀行と為替取引決済のために結ぶ取引契約を行っている。それがコルレス契約と呼ばれる。外国の銀行に預金勘定を開設して、その口座に入出金を行うことで貸借を決済する。この預金勘定をコルレス勘定と呼んでおり、コルレス契約を結んだ相手銀行をコルレス銀行と呼んでいる。

 ひとつの銀行が海外のすべての銀行に預金口座を作っておくことは物理的にも困難となる。このため預金口座を置いていない銀行とは、他の銀行がもつ預金取引関係を利用して、間接的に決済するなどしている。国際間で取り交わされた個々のコルレス関係がネットワークを形成している。

 資金のやりとりはこのようなかたちで行われるが、その送金の安全性を担保する組織が存在している。それが「Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication」であり、SWIFT(スイフト)と呼ばれている。

ロシアの大手銀行をSWIFT(スイフト)から排除、金融の核爆弾とも呼ばれているSWIFTとは何?

 全銀協のサイトによると、SWIFTとは、銀行間の国際金融取引に係る事務処理の機械化、合理化および自動処理化を推進するため、参加銀行間の国際金融取引に関するメッセージをコンピュータと通信回線を利用して伝送するネットワークシステムである。

 SWIFTは送金元の金融機関から暗号化された送金メッセージを受け取り、それを確認したのち、送金先の金融機関に配達する。SWIFTは自らの役割を「国際送金における郵便局」と説明しているそうだが、海外送金を安全に行うために確認を行う機関とシステムである。

 SWIFTはベルギーに本部がある国際銀行間通信協会(SWIFT)が運営する決済ネットワークそのものの名称でもある。およそ200の国と地域の1万1000以上の金融機関が国をまたぐ貿易などの決済や送金に使うシステムで、1日当たり4200万件の送金情報を取り扱っている(27日付NHK)。

 SWIFTを利用できなくなると、その国の企業は銀行を通じた資金のやり取りが困難となるため、貿易の決済ができなくなる。

 今回、ロシアの全部の銀行ではなく一部の大手銀行に限ったのは、その影響が広範囲に及んでしまうためである。当然ながら日本とロシアの貿易などにも大きな影響を与えることになる。

 2012年には欧米の経済制裁でイランがSWIFTから排除され、この年のイラン経済のGDP成長率がマイナス7.4%になるなど、深刻な景気低迷に陥った(27日付NHK)。