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地元長野の千曲川氾濫、ボランティアで泥だらけ小平奈緒に感謝「率先して動いてくれた」

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スピードスケート女子1000メートルに出場した小平奈緒(ロイター)

地元長野の千曲川氾濫、ボランティアで泥だらけ小平奈緒に感謝「率先して動いてくれた」

 スピードスケート女子の小平奈緒(35)=相沢病院=は地元・長野に寄り添い競技人生を歩んできた。2019年10月、台風19号による豪雨の影響で千曲川が氾濫。長野市・赤沼地区も甚大な被害を受けた。小平は20年3月、赤沼地区でボランティア活動に参加し、廃棄物の搬出作業などを行った。当時訪れたのが山口勝義さん(66)の自宅。その後、新たな生活をスタートさせた山口さんが、小平への感謝の思いを語った。(構成・林 直史) 小平さんがお見えになったのは2020年の3月21日のことです。8人のボランティアの方が手伝いに来てくださって、最初は気が付きませんでしたが、作業の前にその中の1人が小平さんだと分かりました。驚いて「大丈夫なんですか? けがをされないようにしてください」とお声かけしましたが、他のボランティアの方たちの話を聞きながら、5時間ぐらい作業をされていたと思います。 台風19号の時は避難勧告が出ていたので、避難所に行く可能性も考え、夕方のうちに家族全員を風呂に入れました。深夜1時頃に避難指示に変わり、家族で避難所に行きました。堤防のライブ映像を見たら、どんどん水が押し寄せていて。決壊だけはしないようにと祈っていましたが、映像がぷつんと切れて見えなくなった。あちこちで「決壊したらしいぞ」という声が聞こえました。これは床下30センチや50センチぐらいの浸水は仕方がないと覚悟しました。 でも、実際は地面から2メートルぐらいの高さまで来ていたんです。自宅に戻ると1階に置いていたテレビ、エアコン、冷蔵庫、パソコン…。どれも水につかって全滅でした。最初はリフォームを考えましたが、築150年近い古い家。長野市で解体費用を補助してくれると聞き新築に切り替えましたが、その申請のためには家や物置の中の物を全て外に出す必要がありました。 家の中は至る所に泥が入り込んでいました。広い家だったので、来る日も来る日も泥片付け。畳や障子も全部捨てました。もう嫌だと思う毎日が5か月ぐらい続きました。近くの災害ゴミ置き場が閉まる日が、翌日に迫っていました。まだ解体に着手できない。どうしようと頭を抱えていた時に、ボランティアの方たちに来ていただいた。8人で運搬用の軽トラに次々とゴミを積み込んでピストン輸送し、とてもその日には終わらないと思っていた作業が、ほぼ片付いたんです。 小平さんも力仕事を本当に真剣にやっていただいていました。一緒にいたボランティアの方も「けがをしないように無理しないでください」と心配されていたんですが、率先して動かれていました。みなさんのおかげで無事に解体の申請をすることができ「復旧復興に向けて、また頑張ろう」と思うことができました。 ボランティアに来ていただいただけでも本当にうれしいことだったんですが、その6日前に子どもが生まれた長男夫婦にサインも書いていただきました。家族全員、小平さんの大ファンです。いつも応援しています。 昨年の12月に新しい家が完成しました。出来上がるまでずっと外から見ていましたが、初めて中に入った日は感動しました。災害当時から比べれば、想像できないぐらい生活は元に戻りました。今でも心の中にはその時の悲しさ、悔しさ。いろんな思いがあります。でも、やっとここまで来たんです。小平さんも五輪が終わって自転車のトレーニングで近くを通られることがあれば、「ここまで進んでいるんだな」と気付いてもらえたらうれしいです。(談)

報知新聞社

最終更新:スポーツ報知