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罪意識が希薄な「SNSいじめ」から子ども守る方法 LINE外し、インスタやTwitterでのなりすましも

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写真:東洋経済education × ICT

罪意識が希薄な「SNSいじめ」から子ども守る方法 LINE外し、インスタやTwitterでのなりすましも

「LINE外し」をご存じだろうか。小学校高学年にもなるとスマホを持つ子どもが増え始め、SNSを通じたいじめが顕在化してくる。昨年は、GIGAスクール構想で配布された端末のチャット機能を使ったいじめに関する悲しい事件もあった。こうした「SNSいじめ」は大人から見えにくく対応が難しい問題だ。学校や保護者は、どう向き合っていけばいいのか。いじめに詳しい、くまゆうこ氏にSNSいじめの現状と大人ができることについて教えてもらった。この記事の画像を見る端末のパスワード管理に頭を悩ませる学校昨年、GIGAスクール構想に伴って全国の公立小学校と中学校に1人1台の端末が整備されました。GIGAスクール構想とは、子どもたちに1人1台の端末を配布(貸与)するほかデジタル環境・教育を推進、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用した教育を実現していく取り組みです。学校の先生はもちろん、保護者の皆さんもGIGAスクール構想という言葉を耳にしたり、ICTを活用した教育を見聞きする機会が増えているのではないでしょうか。中には、学校で配布された端末をお子さんが自宅に持って帰ってきた家庭もあるかもしれません。今までにはない学習方法に期待がある反面、残念なことに、パソコンの正しい使い方やインターネットの利用法について十分な指導ができないまま、端末を子どもたちに渡してしまうことから、現状ではさまざまな問題が生じています。どの学校も頭を悩ませているのが、端末のパスワードの管理です。端末のパスワードがみんな同じであるために、いたずら半分で友達のアカウントにログインするというトラブルもあります。またIDやパスワードが一人ひとり違っていても、小学生だとお互いのIDやパスワードを教え合い、友達のアカウントにログインしたりします。さらに、パスワードを先生が一人ひとり読み上げて「○○のパスワードは○○ね」のように教室で話していたり、パスワードは個人の誕生日で設定しているけれど、教室の後ろには「みんなの誕生日」が書いてある紙が貼ってあり、保護者から「大丈夫なのか」と相談があったという学校もあります。とくに小学生の低学年だとIDとパスワードの管理が難しいので、このようなことになるのかもしれませんが、学校も保護者も「IDとパスワードの大切さ」をきちんと認識することが大切です。昨年は、学校の端末を使ったいじめに関する悲しい事件がありました。子どもたちは深い意味もなく、パソコンやタブレットをいじって遊んでいるだけの意識しかありませんが、学校だけでなく保護者も一緒になって使い方については教えていかなければなりません。リアルないじめよりSNSいじめがエスカレートしやすい訳小学校高学年になるとスマホを持つ子どもも増え始め、ここで一気にSNSいじめが顕在化します。LINEでグループをつくり仲間に入れない、あるいはグループの中から1人を外して別のグループをつくり、外した子の悪口を言い合う「LINE外し」といった事象も少なくありません。SNSいじめのトラブルが最も多いのは中学生です。中学生からスマホを使う子どもが多いためです。グループや仲間意識が強い年代でもあり、特定の1人を全体で批判したり無視したりする「いじめ」が目立ちます。高校生では「SNS上での仲間外れ」はある程度落ち着いてくる一方、インスタグラムやTwitterなどで、誰かになりすまして写真を投稿したり、罵詈雑言(ばりぞうごん)や誹謗中傷の書き込みをするなど、よりピンポイントで執拗、陰湿な「見えないいじめ」がエスカレートする問題が起きています。SNSいじめとリアルないじめは何が違いますか?とよく聞かれることがあります。基本的に、ネットとリアルは地続きであると私は考えていますが、SNSいじめのほうが「いじめている」という罪の意識が希薄で、いじめの内容がエスカレートしやすい特徴はあります。ある女の子が自分の写真をアップして、もともとちょっとその女の子を気に入らないと思っていた別の子が、「この程度で自慢?」「足太いね~」と書き込み、そのうちにほかの子たちも女の子を揶揄する書き込みをし、しだいに激化して、徹底的にたたきのめすような発言が続きました。どうせ誰が書いたかわからない、みんなも書いている、だから別に平気だろうという意識から、冗談交じりの悪口がいつの間にか相手を完全に攻撃する誹謗中傷にまでエスカレートしていった、SNSいじめの典型的な事例です。SNSいじめは、場合によっては匿名だったり、集団心理から加害者の自制心が働かなくなり、そのうえ「いじめている」と自分の悪意ある意識に気づいていない、気づこうとしない傾向があります。いじめは、加害者側は「過去のこと」でも、いじめを受けた側にとっては長く傷が残るものです。インターネット上では、いつまでも書き込みや写真が残る。それを見るたびに、被害者の傷口は深くなる。被害者は長い間、ネット上に置き去りにされたナイフで傷口をえぐられる怖さがある。リアルのいじめのように、物理的に加害者から遠ざかることによる解決策が使えないことも、SNSいじめの特徴といえるでしょう。昨年コロナで休校になった時期、学校に通わないのでリアルのいじめは減ったかもしれませんが、SNSいじめの相談が増えました。すでにネットでつながっている場合は、会わずともネットを中心にいじめが起こることがあるのです。大人から見えにくいSNSいじめにどう対応していくべきか教員も保護者も「SNSいじめは見えにくい」と言います。確かにクローズドな場所で起こるので、すべてを知ることはできません。一つひとつの発言を見ることができないからこそ、子どもたち一人ひとりのモラルが大事になってきます。まず、保護者が考えるべきは「わが子を加害者にしないこと」です。加害者がいなければ、SNSいじめの被害者は生まれないのですから、わが子をSNSいじめの加害者にしないことが、結果的にSNSいじめからわが子を守る手段にもなるのです。子どもたちにネットリテラシー(インターネットを適正・適切に使う知識や能力)がない!と思う大人も多いのですが、中学生・高校生の中には、今までの失敗を生かして「それは言いすぎだよ」「これは言ったら駄目だよね」と自制する子や、「チャットはトラブルが多いので必要最低限の使い方をしてる」など、うまく付き合うことに慣れている子どもたちも出てきています。使い始めが大事なので、とくに小学生は学校で端末が配布されたら、その時点で親子でしっかりインターネットの使い方やSNSについて話し合うことが必要ですし、「学校でどうやって使ってるの?」と一度わが子がどう使っているかを聞いてみてください。親の想像以上に端末を使いこなしている可能性も高いです。そして、折に触れてネットやSNSの話題を投げかけてみること。LINEを使うようになったら、親子でLINEのやり取りをしてみれば、子どもがどう使いこなしているか、その子の癖もわかってきます。同時にSNSを使うリスクについては、「Twitterで変なことを書き込んだらダメ」のような抽象的な話では、変なことが何かわからず子どもに怖さは伝わりません。ネット上の誹謗中傷が原因で命を断った痛ましい事件がありました。安易な気持ちで書き込んだ内容が相手の人生を追い詰めるほど傷つけるのだと、具体的な例を出して、こうしたことも家庭で話し合う時間が大切ではないでしょうか。学校の先生も、授業中のちょっとした時間にネットに関するトラブルを例に出してみんなで考える機会をつくっていただきたいです。GIGAスクール構想が進み、1人1台の端末が行き渡る中、いわゆるネットリテラシーの指導が足りない、指導できる先生も少ない、そして指導するための時間もきちんと確保されていないのが現状です。インターネットやSNS、端末の使い方については学校だけでは教えきれません。そもそも家庭でも利用する機会が増えているので、保護者にも子どもにネットリテラシーを教える責任はあります。上手に利用すれば、インターネットもSNSも便利だし、楽しいツールです。しかし道具である以上は間違った使い方をすれば、誰かを傷つける、自分を傷つけることにもなるのだということは、学校に任せるのではなく、家庭で繰り返し教えなくてはならないことです。(注記のない写真:taa / PIXTA)

執筆:くまゆうこ・東洋経済education × ICT編集部

最終更新:東洋経済education×ICT