13.3型ノートPCにHDMIケーブルを挿し、37V型のテレビに映し出してみた。見やすさは抜群だ
ちょっと前に、テレビコンテンツは、もう放送にこだわらなくても、オンデマンドで好きなときに見てもいいんじゃないかという話を書いた。スマホの画面では小さすぎるが、ノートパソコンの画面サイズならそこそこ映像コンテンツも楽しめるし、もっと大きな画面で映画などを楽しみたいなら、パソコンをテレビにつなげればいい。
パソコンの世界では「ゲーミング」のトレンドが続いている。それはもう無視することができなくなりつつある。
ゲームコンテンツをパソコンで楽しむには、高い処理性能が求められる。ゲームをするつもりがなくても、処理性能を追求すると、結局ゲーミングパソコンを選ぶことになったりする。
この傾向は、当面続きそうだ。つまり、高性能が欲しい場合は、派手なイルミネーション等を受け入れなければならない。そうじゃないものを探すのが難しいくらいになっている。
どうしてこういうことになっているのかというと、業務用、すなわち仕事に使うパソコンは最低限のことができればいいという発想にある。だから高性能なパソコンは、業務用ではなく、コンシューマーに選ばれるし、その筆頭がゲーマーだったということだ。
過去において、ひどいパソコンを使わされている現場をたくさん見てきた。ノートパソコンの小さな画面ではなく、せめて外付けモニターを使えたら効率が高くなりそうなのにと思ったりもした。
また、遅いハードディスクにスワップするメモリの少ないパソコンを使っていたりしている光景もよく見かけた。平気で5年前のパソコンを使い続けさせる現場もあった。
これらは経営する側が、高性能なパソコンを使うことのメリットを理解できないことで起こってきた弊害だ。いや、高性能どころか、普通のパソコンでいいのにそこにコストをかける意志がなかったのだ。
始末が悪いのは、高性能パソコンを使うと仕事の効率が上がって生産性が高まり、それが組織に利益をもたらすことを経営側はもちろん、現場もまた知らなかったりすることだ。処理性能の異なるパソコンを並べて比べるわけではないので、作業がまがりなりにもできてしまう以上、それで問題ないとされる。
冒頭に書いたように、大きな画面にするだけで効率は上がる。パソコンを新調する予算は確保できなくても、外付けモニターを追加するだけで変わるのだ。
在宅勤務が求められている現場では、パソコンをテレビにつないで使うことを勧めればいい。HDMIケーブルを従業員に配布するだけだ。普通のエンドユーザーはそんなことをしようという発想には至らない。だからこそ、めんどうを見る側が配慮する必要がある。
ゲーミングパソコンが高性能パソコンの代名詞となってしまったのは、仕事の現場で使われるパソコンが軽視されてきたことによるものだと思う。コロナ禍において、オフィスと自宅、本業と副業、フリーランスと会社員、業務とプライベートなどなど、社会のさまざまな面がハイブリッドになっている。
そのことが、業務用という世界のもろさをあぶりだした。業務用のクルマは軽自動車で十分という発想を、まず疑ってみるところからはじめてほしい。
もうすぐ春。例年通り、社会に出てくる多くのフレッシュマンがいる。彼らはこのコロナ禍で前代未聞の学生生活を強いられた世代だ。その彼らにあてがわれるパソコンが、これまでの当たり前としての業務用機器であってはならない。
なぜなら、彼らは、過去の学生よりもずっとパソコンに依存して学生生活を送った世代だからだ。そのスキルがハードウェアのせいで抑制されるようなことがあってはならない。
やまだしょうへいパソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life
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