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あのW杯以来のラグビー日本代表戦 6月12日、おじさんファンの寝顔にも溢れた「幸せ」 | THE ANSWER

一人の記者が届ける「THE ANSWER」の新連載、第19回はラグビー日本代表戦

 2021年も多くのスポーツが行われ、「THE ANSWER」では今年13競技を取材した一人の記者が1年間を振り返る連載「Catch The Moment」をスタートさせた。現場で見たこと、感じたこと、当時は記事にならなかった裏話まで、12月1日から毎日コラム形式でお届け。第19回は、6月12日のラグビー日本代表VSサンウルブズの強化試合(静岡・エコパスタジアム)からお送りする。2019年ワールドカップ(W杯)以来の日本代表戦を1万8434人が観戦。長く続いたコロナ禍の閉塞感を打ち消す熱気だった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 母が何気なく言った。

あのW杯以来のラグビー日本代表戦 6月12日、おじさんファンの寝顔にも溢れた「幸せ」 | THE ANSWER

「あの頃は、みんな幸せやったね」

 5月末、実家のテレビに映っていたのは、19年W杯のハイライトだった。トライを決めた福岡堅樹が喜びを爆発させ、ボールを頭上にぶん投げた。スタンドには、密になりまくった超満員のファン。大声を張り上げ、隣の人と抱き合って歓喜に浸る。日本人も外国人も関係ない。肩を組んで歌った。マスクなんてしているわけがない。

 幸せを呼んだ空前のラグビーブーム。わずか数か月後、コロナが世の中を一変させた。20年1月に開幕したトップリーグは、史上最多3万7050人(1月18日・トヨタ自動車―パナソニック戦)の観衆を集めたが、第6節を終えた2月末に中断。そのまま3月にリーグ不成立となった。

 ラグビー界のさらなる発展にはW杯の熱を繋げる必要があったが、未曽有のウイルスにかき消された格好に。初の緊急事態宣言が出されていた時期、近所のスーパーに行くと、入り口で一つの貼り紙が目に留まった。「先日、来店したお客様用の消毒液が盗難に遭いました」。何かと閉塞感が漂う時代。ONE TEAMよ、どこ行った。たった半年前に大流行したフレーズが恋しくなった。

 スポーツ界でも長く続いたコロナとの闘い。21年1月、トップリーグは開幕が延期された末、大会フォーマットを再検討してなんとか開催にこぎつけた。6月12日、601日ぶりに日本代表戦が実現。この日ばかりは、普段の閉塞感が吹き飛ばされた。

 東京から静岡に向かう新幹線。停車するごとに、車内には桜のジャージが増えていく。最寄りの掛川駅のトイレには列ができた。スタジアム周辺は、グッズ売り場や写真撮影用の選手パネルがずらり。試合開始まで3時間以上もあった午後1時には、ラグビー少年、カップル、両親に手を引かれた幼稚園児、かっぷくの良い往年のファン、なんとなく見た感じ「にわかファン」っぽい人も大勢いた。