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日本で“神の手”と呼ばれる「呼吸器外科」「胃外科」「大腸・肛門外科」の名医を実名公開する

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 前編記事の『日本で、最高の名医とよばれる「脳外科」「心臓外科」の医師たちを名前で大公開…! 』に引き続き、日本で名医をよばれる10人の医師たちを引き続き明かす。【写真】名医たちが実名で明かす「私が患者なら受けたくない手術」

日本で“神の手”と呼ばれる「呼吸器外科」「胃外科」「大腸・肛門外科」の名医を実名公開する

がん手術の「究極形」

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 新浪氏や天野氏と並んで、日本の心臓外科で屈指の名医といわれる川崎幸病院副院長・国際医療福祉大学教授の高梨秀一郎氏(62歳)は、近年高齢者の間で増加が著しい心臓弁膜症の手術、とりわけ「弁形成術」のエキスパートだ。 「弁膜症の手術には、牛や豚の組織を使った生体弁、金属製の機械弁などの人工弁を設置する方法と、周囲や体内の組織を使って弁を再建する弁形成術の二つがあります。 高齢の方の場合、人工弁を使うと異物反応で血栓ができやすくなり、手術後に抗凝固剤が手放せなくなるため、弁形成術を行うのが望ましいのですが、長持ちする弁を作るのは難易度が高い」 心臓の内部には、血液の逆流を防ぐための弁がある。弁膜症は、加齢などでこの弁が硬くなり、血流の乱れや逆流が起こる病だ。放っておくと胸の痛みや呼吸困難を引き起こし、心不全で突然死することもある。 「血流の乱れの原因となっている弁を特定し、緩んでいる部分や変性した部分を切り取って、さらに僧帽弁では弁を支える『腱索』という糸状の組織をゴアテックス(耐水性の人工繊維)に置き換えます。 重要なのはただ弁を作り直すのではなく、血流の負荷がかかりすぎて再び壊れてしまわないようにすること。弁の大きさや接合状態をミリ単位で調整しなければ、10年、20年と長持ちする弁は作れません」 東京・築地にそびえ立つ、日本のがん治療の聖地、国立がん研究センター中央病院。その院内でも、年間320件と最多の手術執刀数を誇る名医がいる。呼吸器外科長の渡辺俊一氏(56歳)だ。 60年の歴史を誇る国がん中央病院では、ありとあらゆる手術が行われてきた。渡辺氏自身も累計5600件を執刀する。その知見を踏まえて、肺がん手術の「究極形」にたどり着いたという。 「『ハイブリッド・バッツ』という手法です。脇の下を、一箇所は5~6cm切開して手術器具を挿入し、もう一箇所は1cm程度の穴から内視鏡を入れる。重要なのは、切開したところから指で患部に触れられる点です。 内視鏡だけの手術だと、カメラの映像とCT(コンピュータ断層撮影)画像に頼らなければなりませんが、それだけでは肺がんの範囲や場所を正確に特定するのは難しい。ところが触診すると明確にわかり、取り残すことがないのです」 近年では、内視鏡やロボットを用いた「低侵襲」、つまり傷口の小さい手術が主流だ。しかし傷口を気にするあまり、がんを取り残しては元も子もない。 「ハイブリッド・バッツは、内視鏡と開胸手術のいいとこ取り。しっかり手術して再発を抑えつつ、可能な限り早く退院できるバランスを追求した結果、生まれた手法です」 ちなみに渡辺氏は、'15年に大橋巨泉さん(当時81歳)の転移がん手術も執刀した。巨泉さんにとって4度目の再発だったが、手術後すぐに芸能活動に復帰している。手術直後、本誌連載コラム「今週の遺言」に寄せた原稿は晴れやかだった。----------〈退院後、4日程経ったが、甚だ元気である〉---------- 巨泉さんは残念ながら'16年7月に亡くなったが、渡辺氏の手腕あっての大往生だったと言えるだろう。 国がんが擁するもう一つの拠点が、千葉県柏市の国立がん研究センター東病院である。同院で胃外科長を務める木下敬弘氏(52歳)は、近年急速に浸透してきた胃がんロボット手術の第一人者だ。年間手術数は250件にのぼり、海外の医師にもライブ手術で指導を行う。 「ロボット手術では医学の知識、工学の知識、手技が三位一体となって初めて患者さんの負担が少ない、的確な治療ができると考えています。 例えば、電気メスにどのくらいの電圧を流し、微妙な力を加えながら組織をカットするかにもコツがある。経験上、200ボルト以下に設定すると最も出血なく効果的にカットできます。周りの組織の傷や焼灼(やけど)を最小限にすれば、患者さんの回復は早くなるはずです」

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最終更新:現代ビジネス