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放送作家・竹村武司氏、“山田孝之の頭脳”が狙う逆サイド「全員が同じ方向を向いているときこそ」 (1) - テレビ屋の声(60) | マイナビニュース マイナビニュース マイナビ

竹村武司1978年生まれ、東京都出身。01年に立教大学卒業後、広告代理店を経て、放送作家の道へ。『山田孝之の東京都北区赤羽』『山田孝之のカンヌ映画祭』『緊急生放送!山田孝之の元気を送るテレビ』(テレビ東京)、『植物に学ぶ生存戦略 話す人・山田孝之』『光秀のスマホ』(NHK)といった山田孝之の出演作品や、『サ道』(テレビ東京)、『キッチン戦隊クックルン』(NHK)、『がんばれ!TEAM NACS』(WOWOW)、『BAZOOKA!!!』(BSスカパー!)などを手掛ける。現在は、『魔改造の夜』(NHK)、『タモリ倶楽部』『くりぃむクイズ ミラクル9』 (テレビ朝日)、『7つの海を楽しもう!世界さまぁ~リゾート』(TBS)、『痛快TV スカッとジャパン』『新しいカギ』(フジテレビ)、『ダウンタウンDX』(読売テレビ)、『暗黒家族 ワラビさん』(smash.)などを担当。10月からは構成を担当するドラマ『キン肉マン THE LOST LEGEND』(WOWOW)がスタートする。

――当連載に前回登場したTBSの浜田諒介さんが、竹村さんについて「今、一番マルチな作家さん。バラエティから山田孝之さんの作品で脚本書いたり、子供向けのNHK教育の番組からアニメまで、やってる番組が幅広いですし、宿題(=企画出し)に対して出してくる案がめちゃくちゃ面白いんです。シュッとしておしゃれなんですけど、打ち合わせのときに口が悪くて、そこも好き」とおっしゃっていました。

ありがとうございます。だったら番組にもっと呼んでください(笑)。浜田さんとは、いっとき僕が『炎の体育会TV』に入った時にディレクターとしていらして、それが初めてだと思います。口が悪いのは、浜田さんがそういう人が好きだから、仕方なくですよ(笑)。放送作家は“ディレクターの愛人”なので、その人の鏡なんです。

――放送作家になられたのは、先輩作家の田中直人さんに出会われたことがきっかけなんですね?

広告代理店の営業時代に雑誌の広告企画を考えていて、その雑誌の編集者がもともと所ジョージさんのマネージャーをやられていた人だったんです。雑談で放送作家になりたいという話をしたら、田中直人さんを紹介してもらいました。田中さんは当時、『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ)のチーフ作家で「DASHの企画を考えてみて」って言われて提出したら、飲み屋で添削してくれました。その添削飲み会が、僕の放送作家としての原点です。

いまだに忘れられないのが、「誰が一番早く風邪をひけるか」って企画を出したんですよ。今そんなの会議で出したら、「竹村は終わったな」って言われると思うんですけど、田中さんは怒るどころか、否定すらしなくて。「風邪ひくと鼻水出るじゃん? だから『みんなでビルの上に立って、一番長い鼻水を出した人が勝ち』って企画のほうがバカバカしくない?」って言われて、なるほど!って。頭ごなしに却下しないで、「こうやったほうがテレビ的じゃない?」「こっちのほうが面白くない?」ってアイデアのラリーをずっとやってくれた。これぞプロの仕業っていうのを最前列で体感して、ますます「放送作家になりたい! こんな人になりたい!」って思いました。

――それは何歳くらいのことですか?

25歳です。そのまま会社に外回りってウソついて『鉄腕DASH』の会議にずっと週1で出てて、ネタまで出してました。会議にひとりワケの分からないスーツを着た若いヤツがいて、しかもネタまで出してるって異常事態(笑)。自分でもよくやったなって思います。ミーハーなノリで出てただけで、本当に放送作家になれるなんて思ってませんでした。でも会社員時代、1つだけネタが通ったんですよ。無重力状態になると水って水玉になるじゃないですか。あの中で魚は生きられるかって企画。半年くらい会議通ってたら、「やる気あるなら作家として入れてあげるよ」って言っていただいて、もう次の日に会社辞めました。

――次の日!?

麹町の日テレを出た瞬間に当時の部長に電話して「明日の朝、相談あるんですけど」って言って辞めることを伝えました。『鉄腕DASH』に入っている制作会社のプロデューサーに「よく辞めたね、大変でしょ?」って言われて、「知り合いのディレクターが今度深夜で始まるコント番組で若手の作家探してるよ」って紹介してもらったのが演出家の岡宗秀吾さん。ゴールデンど真ん中の番組と深夜で芸人さんと膝を突き合わせてコントを作る。この2つを最初から経験できたのは大きいですね。

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――そもそも放送作家という職業を意識したのはいつ頃ですか?

それは『(天才・たけしの)元気が出るテレビ!!』(日本テレビ)の「放送作家予備校」ですね。そういう職業があるっていうのを初めて知りました。78年生まれなんで、思春期にドリフ、カトケン、とんねるず、ウンナン、ダウンタウン…とあの時代のゴールデンを全部見てたんですけど、キラキラ、まぶしすぎて自分なんかに作れるとは思いもしなかった。けれど、あの頃のフジテレビの深夜枠「JOCX-TV2」の番組群を見て「これだ!」と思いました。小学校高学年の時に“マイナーがイケてる病”を患ったので、その症状が出たんだと思います。結局、今もずっとこじらせたままで。でも実際テレビ界に入ってみると、あの時代のあの時間にしかああいう番組はなかったってオチなんですけど(笑)

だから自分がやりたい番組は、あの頃のフジテレビ深夜番組のオマージュばかりです。『植物に学ぶ生存戦略』(NHK Eテレ)は『カノッサの屈辱』ですし、『BAZOOKA!!!』(BSスカパー!)の「地下クイズ王」は『カルトQ』ですし、あの頃のフジテレビの深夜を、誰にも頼まれてないのに、勝手に継承してる感じです。特に『IQエンジン』という番組が好きで。クイズ番組なのにスタジオがない、MCがいない、解答者がいない、超アバンギャルドなパッケージなんですけど。当時小学生で、毎回ビデオに録って、それを学校に持って行って、給食の時間にクラスでみんなに見せてたんです(笑)。全員ハメさせて遠足のバスの中でもみんなで見てました。あのイズムのまま、今もそのリメイクをずっとやりたいんです。当時は「第三舞台」の役者陣が出てたんで、今だったら「劇団ナカゴー」とか「テニスコート」とかに出てもらって、いいリメイクができると思うんですよね。

――放送作家として転機となった仕事は何ですか?

それは間違いなく『全日本コール選手権』ですね。ディレクターの岡宗秀吾さん、宍倉昭宏さんと、作家の堀雅人さんという4人のチームで作った企画DVDです。岡宗さんが「“一気コール”って面白いよね?」ってボソッと言ったんです。僕は大学でチャラいサークルにいたんで、一気コールのプレイヤーのほうだったんです(笑)。当時はプレイヤーだったのでよく分からなかったのですが、たしかに客観的に見ると、だいぶ頓馬(とんま)だなって。最初はやり方講座とかカタログみたいな企画にしようって話だったんですけど、「対決させれば面白いんじゃない?」となったんです。今じゃ絶対できないですけど、間口が狭くて、危なっかしくて、でもバカバカしくて、ほんのり知的ってことも含めて、自分はこういうのがやりたかったんだって最初に思えた作品ですね。

『全日本コール選手権』で学んだことは、どんなくだらないことでも選手権にすると勝手に青春しだす(笑)。当初、そんなつもりはなかったんですけど、裏側で一気コールで負けたチームが泣いてるんですよ。なんじゃこりゃ!って思って「カメラ回せ!」って(笑)。だから今でもしょうもないことを大人が本気でやる番組が大好きです。それが『魔改造の夜』(NHK BSプレミアム)にもつながっていくんですけど、『魔改造の夜』で実況を矢野(武)さんにやってもらったのも『全日本コール選手権』からのつながりです。

――浜田さんもおっしゃっていますが、手掛ける番組のジャンルが幅広いですよね。

こればっかりはオファーがあってこそなので、ありがたく全部頂戴してます。昔から節操はないんです。節操は母のお腹の中に忘れてきました(笑)。クイズ番組も好きだし、情報番組も好きだし、嫌なジャンルがないです。落ち着きもないので、右往左往してるほうが性には合ってます。もちろん自分がやりたい仕事ばかりじゃないですけど、興味のない仕事のほうが燃えますね。知らないって楽しいじゃないですか。興味ゼロでも、どこか1つはグッとくるところがあるはずなので、それを見つける作業がすごい好きです。「ワクワクすっぞ」てやつです。

――子供番組もやられていますよね。

『すすめ!キッチン戦隊クックルン』(NHK Eテレ)という子供料理番組の中のアニメ脚本を書いてみないかって誘っていただいたのがきっかけです。子供番組もアニメの脚本も初めてだったので、第1話の脚本を会議に出すときのプレッシャーはエグかったです。子供番組が一番難しいかもしれないです。自分も元子供なのに、子供が何で喜ぶのか、正直いまだによく分かってません。なので子供に媚(こび)を売るのは諦めて、子供が知らないことも堂々とやるようにしてます(笑)。分からないことがあれば親に聞けばいいですし、今なら簡単に調べられますし。

子供番組に限らず、分かりやすくしようって説明過多になりがちですけど、あえて意味不明なことを差し込むのが好きで。山田孝之とやった『東京都北区赤羽』(テレビ東京)もそうですが、不親切に作って、視聴者を混乱させるのが好きです。きっと愉快犯気質なんだと思います。