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アンチ Netflix :広告付き「無料」動画配信サービス が拡大 | DIGIDAY[日本版]

サブスクリプションサービスは、今日のネット配信動画市場を独占するかもしれないが、広告付きの無料プラットフォームがネット接続テレビで視聴する人々にリーチする方法を見つけ出している。この成長は、自宅のもっとも大きな画面で配信を模索している動画プログラマーたちにとってひとつの機会であることが判明しつつある。

映画やテレビ番組、いくつかのデジタルパブリッシャーの24時間リニアチャンネルを揃えたコネクテッドTVデバイスメーカーによる無料動画配信サービス、ロクチャンネル(Roku Channel)は、リーチという点では、いまやロク(Roku)で5番目に人気があるアプリだと同社はいう。ロクはロクチャンネルの視聴者数を具体的には明かさなかったが、ロクのプラットフォーム全体で6月末の登録ユーザー数は2080万人だった。

ロク以外に、ほかの無料動画配信サービスも、コネクテッドTV画面上でのオーディエンス構築を成し遂げている。プルートTV(Pluto TV)の月間アクティブユーザー数は現在約1000万人だ。Xumoによると、同社は7月末に350万人の月間アクティブユーザーを記録し、視聴率は過去1年間で325%増加したという。

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そして、Amazonがある。同社はFire TVユーザー向けに映画、テレビ番組、およびほかの番組を提供する広告付き無償配信アプリに取り組んでいると伝えられている。

これらのサービスの成長は、ストリーミングドングルやボックス、ゲームコンソール、Web対応スマートテレビなど、コネクテッドTVデバイスの購入が急速に増えている結果として生じている。最近のイーマーケター(eMarketer)の見通しによると、アメリカでは8870万世帯がコネクテッドTVを保有しており、これは全世帯の71.6%に相当する。

価格に敏感な消費者

しかし、一部の人々によると、実際に無料動画配信サービスの成長を推進しているのは、テレビセットで配信動画を視聴する人が増えているということだけではなく、人々はお金を支払ってもいいと思う配信サービスの数を絞りはじめているからだという。

「Netflix(ネットフリックス)、Amazon、さらにHulu(フールー)にサインアップしてしまったら、30ドル以上を支払うことになる。価格に敏感な消費者は、無料動画配信サービスは有償サービスに代わりうるもの、または補完してくれるものとして捉えている。これがおそらく最大の要因だろう」と、XumoのCEO、コリン・ピートリー・ノリス氏は述べる。

また、これらのサービスの拡大は、無料動画配信サービスのなかには、サムスン(Samsung)、ビジオ(Vizio)、またはLGといったメーカーが製造するスマートテレビに統合されているものがあるという事実の煽りを受けている。Xumoは、アメリカにおける約1700万のテレビセットの設置基盤は、サムスン、シャープ(Sharp)、ハイセンス(Hisense)、そしてビジオのテレビセットで利用可能になっていると主張する。Xumoはハイセンスと共同で、テレビセットに独自の「インプット」を組み入れていると、ピートリー・ノリス氏は述べた。Xumoは、いくつかのビジオのテレビセット用に、リモコン上でNetflixの隣にXumoボタンを配置した。また、XumoはLGに同社のサービスをホワイトラベル契約している。

テレビメーカーとの取り組み

一方、プルートTVは、主にアプリとして利用可能だが、これまで以上にチャンネルガイドを重視したサービスをテレビセットに組み入れようとしている。同社は最近、テレビメーカーの視聴無料サービスをプログラムする契約をビジオと結び、サムスンTV Plusアプリのプログラミングを提供する契約をサムスンと締結した。

ピートリー・ノリス氏によれば、これらのサービスは広告収益シェアの形で再発生する収益を受け取ることになるため、テレビメーカーにとって魅力的だという。「テレビを売って50%の利益はあげられない。利益シェアは顧客がこれらのサービスを何年間と利用するうちに長期的な利益をもたらすので、テレビメーカーにとっては魅力的なモデルであり、初期費用も不要だ」と、ピートリー・ノリス氏。

動画制作者は、オーディエンスと収益の拡大にともなう、テレビメーカーの野望によって、こうしたサービスに固執している。ロクチャンネルのライブラリーには、有名なスタジオのクラシック映画やテレビ番組、そして、ABCニュース(ABC News)、チェダー(Cheddar)、ニュージー(Newsy)などのデジタルプログラマーによるいくつかのリニアチャネルも含まれている。プルートTVとXumoのプログラミングパートナーには、CBSN、ピープルTV(People TV)、チェダー、ニュージー、テイストメイド(Tastemade)などが含まれているようだ。

追加収益をあげる機会

ニュージーにとって、ロクチャンネルでの配信は魅力的だ。なぜなら、ニュージーもロクで独自の配信アプリを運用しており、ロクは、単純に配信動画消費という点で最大のプラットフォームだからだ。ロクチャンネルで4つの24時間リニアチャンネルの1つをプログラムする機会を提供しているロクと手を組めば、このプラットフォームでの追加配信拡大の可能性や、新しい視聴者にリーチする可能性の高さは納得のいくものだった。

「ロクは、ロクチャンネルを自身のエコシステムの主要部分に成長させることを強力に後押ししている」と、ニュージーのCEO、ブレイク・サバティネリ氏は語る。「ほんのひと握りの選択肢の1つであり、ABCニュースの隣に配置されていることは、非常に都合が良く、我々も考慮すべきことでもある」。

無料動画配信サービスにより、パブリッシャーはいくらか追加収益の機会を得る。米DIGIDAYによる過去の報告によると、プルートTVは同社のチャンネルプログラマーの数社が収益を増やす原動力になっている。ピートリー・ノリス氏によると、XumoはAmazonのPrime Video Directプログラムを通じ、Amazonが動画をアップロードするパブリッシャーに対して、彼らが消費した時間に応じて支払っている報酬に匹敵する広告収益を生み出しているという。

もう1つの魅力

無料動画配信サービスのもう1つの魅力は、同サービスがオリジナルコンテンツを発注するつもりがないということだ。これは、パブリッシャーが既存の動画シリーズやクリップを広く使いまわして、追加のリソースを費やさずにさらなる収益を上げられるということだ。

「我々は、運命に身を任せるつもりで、自社のコンテンツをあらゆる場所で配信しようとしているが、これらのプラットフォームすべてから得る収益に対する投資の比重について慎重になる必要がある」と、インサイダー(Insider)のCRO、ピート・スパンデ氏は述べている。

インサイダーは、ロク、Amazon Fire TV、およびApple TVのアプリとして利用可能なインサイダーTVで、独自のOTT提供を開始する予定だ。また、同パブリッシャーは、ロクチャンネルでの動画配信の話もロクと進めている。同社はプルートTVとXumoも検討している。

「我々の現在の取り組みは、人々が我々を発見し、そのブランドに共感したいと思うすべてのプラットフォーム上で利用できるようにすることだ。これが我々の一番の関心事だ」と、スパンデ氏は語った。

Sahil Patel(原文 / 訳:Conyac)