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社長が知るべき会計知識とは 直感と洞察を鍛える2冊(NIKKEI STYLE) - Yahoo!ニュース

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トップがきちんと把握しておくべきマネジメントの基本とは何か。目の前の問題解決で実績をあげ、社長に上り詰めたとき、ふと不安がよぎったり自信が持てなくなったりする瞬間が訪れるかもしれない。社長の悩みに寄り添ってきた気鋭のコンサルタントが意思決定のよりどころになる経営書を紹介する。◇ ◇ ◇「ROA、ROE、ROIC、キャッシュフロー……」。会議で頭の上を飛び交う言葉の意味がよく分からない。そもそもこれまでは、予算の目標値と進捗だけを気にしていればよかったし、どこかで「利益さえ出ていればそれでいいじゃないか」とも思っている。こっそり会議が終わった後に言葉の意味を調べてみると、参照する先によって微妙に定義が違っていたりもして、そのような曖昧な言葉を気にする必要があるのかは疑問が残る。もしあなたが社長になってこんな本音を抱いていたら、銀行や投資家からそっぽを向かれてしまうかもしれない。「利益を出していたらそれでいい」という姿勢は社長には許されないのだ。ファイナンスを理解するには会計の基礎知識が必要だが、短期間で理解するのは至難の業だ。そんな悩みを抱えるあなたは、まずざっくりと、BS(バランスシート)とPL(損益計算書)の関係だけを覚えていただきたい。BSには会社が持っている「武器」が書いてある。例えば、事業を行うために集めたお金や、そのお金で作った工場や製品だ。これらの武器をもとに戦って得た売り上げや利益、つまり「戦果」が書いてあるのがPLだ。武器と戦果がそれぞれ別々に、BSとPLに記載されているという点を踏まえたうえで、以下の2冊をお勧めする。

■「BSとPL」とは「武器と戦果」

『新版 財務3表図解分析法』 國貞克則著 朝日新書

 

写真はイメージ=PIXTA

貞克則『新版 財務3表図解分析法』(朝日新書)は、様々な会社の事例を基にBSとPLの関係を視覚的に表し、社長にとって最も大事な指標と言っても過言ではない、ROE(Return of Equity=自己資本利益率)の考え方を説明してくれる。ROEとは、自己資本(資本金など)に対して、どれだけ利益(当期純利益)が出たかを表す指標だ。資本金は株主が出資したお金のことで、本書の表現を借りると、ROEは株主にとって「自分が出資した資本金が1年間にどれくらいの利息(当期純利益)を生んでいるか」という点を測る指標だ。自己資本はBSに書かれていて、当期純利益はPLに記載されている。ROEはPLの当期純利益を分子に、BSの自己資本を分母にとることで、株主のお金がどれくらい効率的に利益を生みだしているのかを表してくれている。本書はこのBSとPLの関係を図で表現してくれる。ROEの分母にあたるBSの自己資本が大きいのに、PLの利益が小さいと、要は効率が悪い。B SとP Lを視覚的に左右に並べることで、2つの大きさの違いを見せ、直観的に理解しやすくしてくれているので、細かいファイナンス用語の理解に不安があっても何が議論されているかが分かりやすい。BSとPLの関係が直観的に理解できれば、どんなにPL上の利益が出ていても、それだけでは駄目であることが分かるであろう。例えば同じ1億円の利益を稼ぐ事業でも、10億円の資本金に対しての1億円の利益なのか、50億円の資本金に対しての1億円の利益なのかで、意味が異なってくる。前者のほうが明らかに効率がよい。筆者が思うに、社長の立場で「利益がでているからそれでいいでしょ?」と思ってしまうのは、「株主のお金をどれだけ効率的に使っているか、私は知りません」と言ってしまっているようなもので、そんな人にだれもお金を投資してくれないであろう。ROEを理解していればそんな事態を避けられる。ROEは株主と会社の関係を端的に表してくれている指標だからだ。株主の出資したお金に対し会社が生み出すお金が多いほど、ROEも高くなり、株主の経営に対する満足度は上がりやすいはずだ。ではなぜROE以外にも様々な指標があるのであろうか? ROEだけを見ていてはいけないのだろうか? 筆者が考えるにダメな理由は2つある。1つは、ROEという数値は端的すぎて、数値が悪いときに会社のかじ取りの何が問題なのかが分かりにくいこと。もう1つはROEが高いか低いかは、それ単体だけを見ていては判断ができないことだ。例えば、A社のROEは2%ですと言われた際に、その2%はいい数値なのかどうかは分からない。①については、『新版 財務3表図解分析法』でもデュポンモデルと言われるROEを分解した指標を解説することでより深く紹介してくれている。②も含めさらに詳細を知りたい人は応用編まで踏み込むことをお勧めする。

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最終更新:NIKKEI STYLE